大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)272号 判決

小倉市大坂町七一番地

上告人

中条正夫

右訴訟代理人弁護士

野口美実

福岡市水茶屋町二〇番地

被上告人

九州電気工事株式会社

右代表者代表取締役

橋岡八郎

右当事者間の土地建物所有権移転登記手続請求事件について、福岡高等裁判所が昭和二四年八月二六日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨上告の申立があつた、よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由について。

原判決の所論約款の解釈に関する判断は正当であつて、所論のような経験則違反等の違法のあることはみとめられない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

昭和二六年(オ)第二七二号

上告人 中条正夫

被上告人 九州電気工事株式会社

上告代理人野口美実の上告理由

原判決は

「控訴人の云ふ様に契約違反者自ら好む処に従つて何時でも右金二万円の倍額を償還し或は之を抛棄して契約の解除が出来るとの趣旨のものであるとは到底これを解する事は出来ない」

と判示したが上告人は斯る主張をした事はない

上告人の主張は原判決摘示の様に

「ところが控訴人は岡本と被控訴人との間の売買に於て岡本は昭和二十一年十二月十七日迄に現住者から明渡を受けて明渡済の本件土地建物を被控訴人に引渡さなければならない特約上の義務を負担して居り当時小倉市における店舖向建物払底の事情からして賃借会社から右期限迄にその明渡を受け難い事もあり得る場合を考慮に入れて特に「本契約に違反したる時は売主は手附金の内金二万円の倍額四万円を償還し買主は右手附金二万円を放棄するものとす、この場合に於て本契約は当然解除せられたるものとす」との条項を設けたのであつた。果せるかな昭和二十一年十一月末頃になつても岡本は明渡しの時期はもとより其能否すら予測出来なかつたので右事情を被控訴人に再三告げて解約を申出た末昭和二十二年四月二十二日前記条項に基く解約の通告を為すと共に返還代金等の計算を求めたが黙殺されたので同年十月三十日所定の金四万円を被控訴人に償還の為め提供して契約解除の意思表示を為した。よつて所有権を取得して居る事を前提とする被控訴人の本訴請求は失当である」と云うのである

詰り賃借会社たる第三者の明渡しがない限り期限内に「明渡済みの物を引渡す」と云う履行が出来ないから其時は売渡人たる岡本に於ても契約の解除の出来るとの趣旨であり被上告人も此の意味を承認して契約書七条の特別規定を定めた(契約書末尾奥書―甲一―御参照)が賃借人の為め当事者双方の目的に副う家の明渡が期間内に出来なかつたから岡本は適法に解除をしたので此の場合岡本は契約違反者でないが仮りに然りとしても特に解除権が留保されて居ると云う主張である

然るに原判決が漫然として契約違反者自ら好む処に従つて何時にても云々と前記の如く判示したのは審理不尽か理由不備又は理由ソゴの違法があるから破毀を免れない。

以上

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